第28回 いいモノ、安いモノ、いい人がつくったモノ

良書と出会いました。
藤村靖之さん辻信一さんの共著「テクテクノロジー革命~非電化とスロービジネスが未来をひらく」。

藤村さんは千以上の特許を取得し、科学技術庁長官賞や発明功労賞も受賞された日本有数の発明家です。かつて大企業のトップエンジニアだったそうですが、お子様が喘息を患った際に、テクノロジーの発展の裏で病の原因となる化学物質などを産み出してきたこれまでの在り方を改め、「子供たちの安全と環境のためにいいこと」だけに取り組む発明家に転身されたそうです。
「テクテクと人間らしいペースで歩む科学技術、それがテクテクノロジー」と言うことで、モンゴルの人のために現地での生産とビジネス採算が成り立つ電力を使わない非電化冷蔵庫を考案したり、ナイジェリアにて十分な雇用をうみだす非電化のジュース工場の設立を進めたりと、興味深い活動を進められています。しかもその発明やビジネスを特許でおさえたりせず、志を継ぐ現地の人にうけわたしています。
スローライフやスロービジネスに関心が深い方や志向している方にとって、きっと共感出来る本ですが、いつの間にか身に付いた既存の常識や概念にとらわれることのない発想の転換で世を明るくしていくその在り方は、所謂IT企業に身を置く私にとってもとても新鮮で、読み進めるにつれて不思議と肩の力が抜ける心地よさを感じました。
こういう一冊に出会った時って、本当に幸せです。

さて、私の拙文では上手には書籍の良さを伝えきれず、逆に読書意思を減退させかねませんので書評はこの辺にして、私の心に残った一節を。
モノを買うときの基準に、これまでの「いいモノ」「安いモノ」に加えて「いい人がつくったモノ」と言う新しい基準が加わって欲しい。(吉田意訳)

そんな社会、素敵だと思いません?