第10回 愚直に、愚直に。

気がつけば私のコラムもはや10回目。
記念すべき?第10回では、近頃の私のバイブルのような書籍を紹介します。
「なーんだ、書籍ネタか。10回にして吉田もネタ切れだな。」などと思うなかれ。
これは単なるお奨め書籍の紹介だけでなく、経営者吉田へのメス入れでもあるのです。

私が強くお奨めする1冊は、辻俊彦さんの著書「愚直に積め! ―キャピタリストが語る経営の王道・99」
ベンチャーキャピタリストである辻さんによる、起業家・経営者への熱い応援です。
シンプルで力強い言葉が痛いほど刺さります。

一部引用させていただくと
・ベンチャー企業は、社会に新しい価値を提供し、世の中を良くしていく使命を帯びている。
・現実の延長線上にない未来を創るには、行動することが重要になる。
・計画の無い実行は時間つぶしに過ぎず、計画の無い検証は自己陶酔に陥る。
・目標設定をする目的は、目標を達成するためではなく、目標を目指してアクションを起こすことである。
・「判断」とは存在する正しい答えを探すこと。「決断」とは正解がない場合に決めること。正否は現場で検証する。
・真剣だからこそ怒る、というのは、経営責任から逃れたい言い訳にすぎない。
・自社の社員の無能さを吐露することは、自らの無能さを強調しているにすぎない。
・自らを正義の代弁者だと思った瞬間、人間は間違いを犯す。
・自らは無知無能の愚者であるから、常に学びの機会を与えられているし、全ての人は師匠となる。

太宰治の小説「女生徒」にまつわるこんな話を聞いたことがあります。
「女生徒」があまりにも的確に思春期の少女の心を描き出しているので、読んだ少女が自分の事を書かれていると思い、親に読まれないように机の引き出しに隠した。
それに似ているかもしれません。
この本を初めて読んだ時「当社社員には読んで欲しくない。」と思いました。
この本を読んで経営者吉田を眺めたら、経営者としての欠損部分が一目瞭然ですから。
しかし、考え直すまでもなく私に足りないものがあるなんて当たり前。
隠して隠せないものならば白日の下にさらけ出し、それが恥ずかしいのなら成長するしかないのである。

サイファー・テックの諸君。
自社の社長を正しく厳しく見極める為にも、是非「愚直に積め」を読んでみてください。
辻さんが求めているのは、天才的な切れ者によるエレガントな経営ではなく、情熱をベースに愚直に実践と挑戦を繰り返す地に足付いた経営。
だとすれば、私たちは前者にはなれないでしょうが、心と覚悟次第で後者にはなれるかもしれません。
愚直に進みましょう。