サイファー・テック代表取締役 吉田基晴のコラムです。
2011.6.1[ 第83回 ]
あゆ解禁

「あゆ解禁」と聞いて「浜崎あゆみさんの新アルバム?」なんて思ったあなたは、私とは別の人生を歩いてきたのかと存じます。
あゆと言えば、魚の鮎。6月1日と言えばその鮎の解禁日(河川によって異なります)でございます。
「あゆ解禁」の響きに私のDNAの奥底が揺さぶられ、数々の思い出が蘇りましたので、この機会に仕事を中心に知り合った皆様にも、鮎を通じて私の一面を知って頂こうと存じます。
あゆ解禁の日、若き頃の私は学校があろうがテスト前だろうが、いや、社会人になっても変わらず川に向かいました。
夜中のうちに川に着き、日の出とともに鮎を追いかけたものです。釣りなんてのどかな手法ではございません。水着と水中眼鏡を着け、銛(モリ)ひとつで素潜りする原始的な漁、いえ、狩りです。肉食系男子どころか狩猟系男子でございます。
南国四国の初夏とは言え、早朝の清流の冷たさは想像を絶し、手足の痺れからドラえもんのような体型の私が、危うく「どざえもん」になりかけたこと、数多でございます。
天然の獲れたての鮎の香りをご存知ですか?別名「香魚」と呼ばれるその魚体から漂う香りは、西瓜を百倍甘くしたような、胸がすくようなそれはそれは甘美な香りです。子どもでも大人でも無い危うい時期の若鮎の姿を追いかけ、願いかなってこの手に得、そしてその香りに恍惚とする瞬間は、人生最上級の喜びのひとつと言っても過言ではございません。
この極上の喜びに魅了されていた私はこの時期、他事はそっちのけでした。そんな私に「魚と私、どちらが大切なの?」「獲った魚にはエサはやらないあなたなのにね」などの言葉を発する方もいらっしゃいましたが、間違っても責めは致しません。人としてもっともな感情でございます。「本能的には魚の方が好きな気がする」などと答えた私が若鮎よりも若こうございました。愚か者でございました。
時は流れ、40才のあゆ解禁日は東京で迎えました。早朝の会議に向かう電車の中で今日があゆ解禁日であることを思い出しました。
もう「魚の方が好きかも」などと口にはしないくらいには大人になった気がします。
けれども、本能に従い行動したあの熱中は、いつまでも大切にしたいと思う私でございます。
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