第94回 繋がれば幸せか?

立場を明確にせずに発言するのはどうも卑怯な気がしますので、冒頭に宣言いたします。私はTPP加盟反対派でございます。

私は経済も農業も医療に関しても十分な知識を持ち合わせておりませんので、専門家の人に指摘されますと「さよですか、すんまへん。」と這々の体で退散せねばならないことを承知の上で、反対なのでございます。
気候も立地条件も規模も文化も歴史も違う国や人が、明文化できるような共通の経済ルールで繋がって活動していくことに、理屈ではなく違和感を感じるのでございます。

私が生まれ育った、漁業や農業や林業といった一次産業中心の小さな田舎町では、当時多くのものが地域だけで流通していました。お魚やお米やお野菜は親類や知人から直接購入したり手渡しで貰うことが日常でした。
受けとる、虫食いだらけのキャベツやくねくねのキュウリには「これ、形は悪いけど無農薬やけんな。」という言葉が添えられていました。
顔が見える身近な相手に譲るものは、手間をかけても農薬を減らしたりして少しでも安全なものをと考えてくれていました。

私が懐かしく思う子供の頃のお話しだって、矛盾に満ちたことだと今なら判ります。
国内流通も発達し国境を越えた商取引も当たり前の今、またその恩恵を享受してきたこの国に生きている私がTPPだけをやり玉に挙げても仕方無いことも重々承知しています。しかしグローバルだとかボーダレスだとかという言葉の下にますます経済が繋がっていく事に不安を覚えるのも事実です。

あの頃からもう30年近く。
その30年の歳月の間にはたして人は国境を越えたまだ見ぬ国の人に対しても常に思いやる心を持つほど進化しているのだろうか。