第177回 目に青葉 山ほととぎす

やわらかい磯の風、薬王寺の桜、巣を探すツバメ・・・。
この時期の美波町の魅力を風流人気取りで語ってみれど、やはり私は“花より団子”。
この時期の美波に出張する一番の楽しみはなんと言っても初鰹でございます。
先日、私の美波入りを聞きつけた地元の漁師さんが漁に出てくださり、今年初水揚げのカツオを振る舞って下さいました。

(初鰹の刺身と山菜の天ぷら)
(初鰹の刺身と山菜の天ぷら)

「さあ、刺身を食べてみてくれ。」
「ほら、大蒜も添えて。」
「刺身、もっと箸を伸ばして。」
「あら汁もあるよ。」
「あら汁、どんどんおかわりして。」
「満腹なったか?」
「今年もやっと春のカツオを社長に食べて貰うことができた。」

旨味と適度な脂に春のさわやかさが同居したこの時期のカツオが美味しいことは言うまでもありません。
しかし私を一番喜ばすのは、太平洋に漕ぎ出し何時間もかけて釣ってきた宝石のようなカツオを、今なら高く売れるカツオを御馳走して下さるその心。誰かのために汗をかけるその在り方。

目に青葉 山ほととぎす 初鰹
毎春のひそやかな楽しみです。