サイファー・テック代表取締役 吉田基晴のコラムです。
2016.7.4[ 特別回 ]
時評とくしま 7/1付 美波で半X半IT

 自然に囲まれた田舎暮らし、趣味や自分らしさを大切にしながら生きる「半X半IT」に対して、「ゆったりとしているのでしょうね」との声を頂く。時に「そんなのんびりした生き方をしていたら緩んでしまいませんか?」と心配されることもある。
 田舎にあるのは、都会の喧噪(けんそう)や厳しさに疲れた人たちを癒やす自然と、気のいい人たちに囲まれたのんびりまったりライフというイメージが強いのだろう。
 少なくとも私には違って見える。やることの数、一人が担う役割が圧倒的に多く、むしろ東京暮らしよりも忙しいのが実態。仕事はもちろん、季節ごとフィールドごとの遊び、祭り、草刈り、防災活動…。先日は社員総出で選挙の看板立てにも参加した。現実の田舎は実に忙しいのである。
 漁師町らしさなのか、ここ美波では頻繁に飲み会も催される。ちょっとしたイベントでもあろうものなら「反省会」「打ち上げ」「打ち上げの反省会」といった調子だ。
 そんな中に、今も忘れられない飲み会がある。サイファー・テックのサテライトオフィス「美波Lab(ラボ)」のある地域の人との会合に大幅に遅参した時のことだ。理由を説明する私に、あるおっちゃんがひと言。「社長。仲間との酒の場に遅れるってことは、安っぽい仕事しよるんやなぁ」。その後はいつもの楽しい飲み会が続いたが、実に考えさせられた。
 時間をコントロールできていない仕事ぶり、酒の席に遅参して言い訳をするやぼったさ、そして何よりも、仲間との語らいや人生そのものを楽しむための糧を生み出す仕事が、その時間を失わせているという本末転倒さに気付かされた。
 携帯やメッセージでいつでも連絡が取れる安易さの半面か、「いけそうなら参加します」「仕事が終わり次第駆けつけます」などと、だらだらとけじめの無い生き方をするようになっていたのかもしれない。そもそも何を大切にしようとしていたのかさえ考えなくなっていたのかもしれない。実に痛い指摘だった。久しぶりに叱られた気がした。本当に叱ってくれた気がした。
 いつの頃からだろうか。先輩が後輩に、上司が部下に、親が子にさえものを言わなくなった、言えなくなった気がする。「人それぞれに考えが違う」ことを尊重し過ぎてか、必要以上に関与しないことを良しとしてか。深く問われるような会話が減った気がする。
 私は美波のおっちゃんたちの底抜けな明るさと鷹揚(おうよう)さ、ストレートなもの言い、そして時に見せる厳しい面が大好きだ。ここには肩書だの業種だの年齢だのを超えた、人と人との付き合いと学びがある。ここには人に対するとてつもない優しさがある。
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