第211回 選択肢の数

この春、徳島県南の小さな町に我が子を連れて移住した我が家。
地方志向の人も増えてきている昨今とはいえ、東京→田舎への一家移住はまだまだ珍現象なのか、「なぜですか?」「何を求めた移住なのですか?」との質問を多くいただきます。
その根底にあると感じるのは田舎の選択肢の少なさに対する考え。選択肢が多い方が良いという通念。お店に病院に教育に娯楽・・・。確かにそうした選択肢が田舎に少ないのは間違いありません。しかし私は選択肢の多さと幸福感は必ずしも対の関係では無いように思っています。
思い出すのはオーストラリア大陸をポンコツ車で放浪していた学生時代の思い出。
長い長いドライブを終え、たどり着くその日の宿泊地。本来なら何もかもがそろう都市に着いたときにこそ幸せを感じそうなのに、砂漠の真ん中のガソリンスタンド兼食料品店兼キャンプ場が1軒といった風情の極小の町にたどり着いたとき感じた幸福感といったらありませんでした。
何も探さなくてよい快。
何も選ばなくてよい快。
余計なことを何もしなくてよい快。
夕げの支度と車の調子と自分だけに向き合えばよいシンプルで上質な時間。
選択肢の少ない幸福感。

“人生に必要なものはそれほど多くない”。
改めて思う田舎暮らしです。