第240回 こだわり

師走の都内でタクシーに乗りました。
偶然乗り込んだのは国産4.6リッターの大型セダンでした。
陽気な大柄の運転手さん、この車種が好きで、代々乗り換えているそうです。

「広くて快適ですね」
「そう言っていただけるのが嬉しくて(笑顔)」
「同じ値段で得した気分です」
「こいつのお陰でそう言っていただけることが多くて(笑顔)」
「珍しいですよね」
「僕はこの車が大好きでね、これしか乗らないんですよ」
「燃費を考えると大変でしょ?」
「確かにそうだけど、毎日長い時間乗る車なんでね。好きな奴と一緒に居たいんですよ(笑顔)」
「同業のライバルはハイブリッド車ばかりだから厳しくないですか?」
「そんな車が増えるからこそ、僕の車にあたったお客さんが喜んでくれるのが嬉しくて(笑顔)」
「次に乗りたいのもこの車種ですか?」
「あと30万キロこいつと走ったら、こいつの後継車にしますよ。その日も楽しみでね(笑顔)」

“好き”“嬉しい”“楽しみ”。そんな言葉ばかりが出てくる運転手さんでした。
こだわりの先のやさしい言葉。

こういう人が私は好きだ。