第131回 お餅投げ

“お餅投げ”は上棟式などの神事に際して、集まった人々へ餅をまく風習ですが、徳島県美波町でも私が子供のころは家屋の新築や漁船の新造時などに頻繁に開催されていました。
あの頃の時代背景だったのかそれとも田舎の人の特性だったのか、お餅に対する情熱は凄まじく、町中の人が集まり、“天の餅”や“角の餅(すまのもち)”と呼ばれるお金の包まれた特別なお餅の争奪戦などは怪我人が出るほどの熱狂でした。
真っ青な空に真っ白なお餅が舞うシーンと、降ってくるお餅が身体にごつごつと当たった痛みが今も記憶に残っています。

人口減少や家の建築方法の変化、漁師さんの減少などから、近頃は美波町でもめっきり見かけなくなったこの“お餅投げ”。
楽しいことなら何でも町の人と一緒にやってみたいサイファー・テック、この度の徳島県美波町への本社移転を記念して開催いたしました。
本社移転記念お餅投げ

当日はたくさんの皆さんが駆けつけてくださり、用意した180kgのお餅とお菓子がものの5分程度で消えました。
「やっぱり餅投げはええなぁ」とご近所さん。
「ようけ(たくさん)拾えたよ~」と笑顔のお婆ちゃん。
拾った直後にお餅に美味しそうにかぶりついてくれたお子さん。
そんな声を聞け、そんな姿を見られて、とても嬉しかった。

「お餅投げ」。
人と人がしっかりと繋がっていた時代に盛んだった行事。
“お餅”ひとつに、投げる側も拾う側も熱狂の時間を共にし、繋がり、そして喜びを感じられる。
「お餅投げ」。
今の時代にこそ意味があるように思われます。