第146回 船の上で想うこと

愛船、阿武能丸の年始めは太平洋での寒ブリ狙い。
松方弘樹さんになったつもりでプロ漁師が集う海域に小舟で挑みました。
完敗。
ものの見事にはね返されました。
寒ブリどころか、竿がピクリともしない完全な空振り。
最後は吹き付ける寒風と船酔いに這々の体で漁場を離れたのでございます。

船酔いでグロッキー状態
船酔いでグロッキー状態

悔しさばかりの帰路の船上、すぐに成果を欲しがる欲張りな偽松方の心には
「最新の魚群探知機を買おうか」
「GPSも欲しいな」
「電動リールで効率を上げる?」
「船のエンジンももっと良いものに替えてはどうか」
などと、安易な最新ツール頼りの策略が去来していました。

妄想の先でふと思いが至ったのは、エンジンも魚探も無かった頃の漁の姿。
きっと当時の漁師さんたちは道具の工夫に加え、潮や風や海の色や海鳥の飛び方、そして最後は自分の直感。
自然のささやきと経験と感覚を研ぎ澄ませ、大自然と向き合っていたに違いありません。

きっと私の仕事でも同じはず。
他者が感じない小さな変化や胎動に気づけ、そして自分の感性を信じて船を進められるか。
船の上でもビジネスでも、そんな男になりたいと思います。