第53回 食と職

「何を食べても飲んでも東京が一番おいしい」という話を聞くことがあります。
「同じ食材でもお酒でも最上級のものは東京に集まるからだ」とも聞きます。
食通っぽい方の意見だったりするので、それはそれで見聞を重ねた上での一つの真実なんだろうと特に反論はしません。
私などはグルメというよりグルマンに分類される人種でしょうから、微妙な味覚を判断できるような高等な味覚は持ち合わせていません。
しかし、九州の焼酎なら九州で飲むのが一番おいしいと思いますし、泡盛だって沖縄で飲む泡盛がやはり別格なように思います。
気温、湿度、気圧、時間感覚、人が作り出す雰囲気などなど、文化と言っていいような様々な要素から味覚は成り立っているから、やはりそこで生まれ育ったものはそこで一番輝くのではないでしょうか?

先日、とある方から「景気が低迷し世間には求職者があふれている時勢なんだから、この状況を利用して人材を常に置き換えながら(常に人件費を下げながら)事業を回していくことが今の経営には必要ではありませんか?」というような訓戒を頂戴しました。ある側面から見れば正しい理論かもしれませんが、誰が働いても同じ結果であれば、その仕事は私たちがやる必要は無いように感じます。

食も職(企業)も同じ。
各地の食材を比較サイトを駆使して一円でも安く購入し、一人で食べるような食事はとても寂しい。
私は、その場に宿り個に宿る個性を仲間で楽しむグルマンでありたいと思う。