第273回 関係性

例えば、川の源流部の変化は海に。

田舎暮らしの有り難さのひとつが、自然界も人がつくった社会も、全ては複雑に絡み合い、関係し合い、互いに影響し合って成り立っていることを目の前で認知できることだと思います。賢明にして、想像力豊かな諸氏にとっては「そんなの当たり前。都会に居たってわかるよ」なのかもしれませんが、私などは事あるごとに「ほー、そうだったかぁ」と驚愕、学ぶことしきりなのでございます。

日和佐漁協にあがったタカアシガニ

さて先日、漁業組合の組合長さんとお酒を交えながらじっくりお話しをしました。漁師仕事の醍醐味、海のロマンと怖さ、そして組合員の高齢化、後継者不足といった漁業を取り巻く環境のこと、取組とその成果など、話題は尽きませんでした。私たちの食卓を支えてきた漁業が置かれた厳しい環境変化に、諦めること無く次々と新しい挑戦をする組合長の姿に、感銘をうけたのであります。

内閣官房の「未来技術×地方創生検討会」の委員でもある私。生半可な技術活用論をぶとうと思ったのですが、組合長は「もちろんわしらも、IoTやAIなどのことも情報としてはずっと追いかけとる。ほなけど、特定漁法や特定魚種の捕獲を、生産性向上や効率化と称して進めるだけのものだったらそれは危ない。何かを突出させたら思わぬ所に思わぬ影響が必ず出る。海や生き物はもっともっと複雑に関係し合っとる。ずっと漁師をやっているわしらでもその関連性に気づかないことだらじゃ。そこは慎重にいかなあかん。」と話してくれました。

そう。全ては人智を越えて繋がっており、知っても知っても知り得ない。その一点に対しては何があっても謙虚にあらねばならぬ。