第277回 「夢 語ろか」

勝手に父親のように慕っていた、隣町のおやっさんが死にました。

四国の田舎町で、わずかな手元で始めた商売を100億事業に育て上げ。

地域を自分ちの庭のように愛で、社員を我が子のように愛し。

何歳になっても商売人で、好奇心に溢れ。

表情の奥をいつも見られ、質問はすべて数字。

それでいて、片時もユーモアとスケベ心を忘れず。

だから一緒にいると、えも言われぬ緊迫感と笑いが同居する。

そんなおやっさんでした。

そろそろ会いたいなと思っていると、何故か電話がかかってきました。

誘いの言葉は決まって、「吉田はん。夢 語ろか(語ろうか)。」でした。

「夢 語ろか。」

僕には到底言えないそんなセリフが、不思議と似合うおやっさんでした。

 

「吉田はんは、よう頑張っとる。」

息子ほども年が違う私を、足下にも及ばぬ私を、なぜか認めて褒めてくれました。

いつも甘えて、お願いばかりの私を、惜しみなく応援してくれました。

 

いつか、頑張りだけじゃなく、結果で褒めてもらおうと思ってました。

いつか、こちらから夢語りをお誘いしたいと思っていました。

その前に死んじゃった。

目標とする人がひとり減っちゃった。

 

おやっさん、ほんまありがとう。

ええ勉強させてもらいました。

だいぶ先になるだろうけど、次はこちらから電話します。

もし、あの世では先輩後輩が無いならば、その時は僕から言わせてください。

「夢 語ろか」って。