第277回 「夢 語ろか」
2019-07-01
勝手に父親のように慕っていた、隣町のおやっさんが死にました。
四国の田舎町で、わずかな手元で始めた商売を100億事業に育て上げ。
地域を自分ちの庭のように愛で、社員を我が子のように愛し。
何歳になっても商売人で、好奇心に溢れ。
表情の奥をいつも見られ、質問はすべて数字。
それでいて、片時もユーモアとスケベ心を忘れず。
だから一緒にいると、えも言われぬ緊迫感と笑いが同居する。
そんなおやっさんでした。
そろそろ会いたいなと思っていると、何故か電話がかかってきました。
誘いの言葉は決まって、「吉田はん。夢 語ろか(語ろうか)。」でした。
「夢 語ろか。」
僕には到底言えないそんなセリフが、不思議と似合うおやっさんでした。
「吉田はんは、よう頑張っとる。」
息子ほども年が違う私を、足下にも及ばぬ私を、なぜか認めて褒めてくれました。
いつも甘えて、お願いばかりの私を、惜しみなく応援してくれました。
いつか、頑張りだけじゃなく、結果で褒めてもらおうと思ってました。
いつか、こちらから夢語りをお誘いしたいと思っていました。
その前に死んじゃった。
目標とする人がひとり減っちゃった。
おやっさん、ほんまありがとう。
ええ勉強させてもらいました。
だいぶ先になるだろうけど、次はこちらから電話します。
もし、あの世では先輩後輩が無いならば、その時は僕から言わせてください。
「夢 語ろか」って。