個人情報流出で起きる問題とは?企業における影響・原因・対策を解説!

個人情報流出で起きる問題

はじめに

2015年改正の個人情報保護法が2017年に施行され、要配慮個人情報に関する規制が新設されるなど、企業は個人情報保護に対して一層の責任を求められるようになりました。その一方で、サイバー攻撃や内部不正による個人情報流出のリスクは年々高まっています。本記事では個人情報を業務で取り扱う担当者の方に向けて、企業における個人情報流出の影響、原因、対策について解説します。

サイファー・テックでは個人情報の流出を防ぐ、さまざまなセキュリティ対策サービスを提供しています。

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個人情報流出とは?

個人情報の流出とは、企業が収集した個人に関する情報が、何らかの理由で外部に漏れてしまうことを指します。個人情報には顧客の連絡先や住所だけでなく、自社の従業員や取引先企業の情報なども含まれます。

ここでは、個人情報の具体的な定義についてもう少し詳しく解説します。

個人情報保護法における個人情報

個人情報保護法における「個人情報」とは、下記の通り定義されています:

「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」
引用:個人情報の保護に関する法律 | e-Gov 法令検索

重要なのは、特定の個人を識別できるかということです。例えば生年月日や電話番号だけでは特定の個人を識別することは難しいですが、これらの情報が氏名などと組み合わさると個人を特定できるようになります。このように、メールアドレスやユーザー名、携帯電話番号などの特定の個人に紐づいた識別番号、記号、符号なども、個人を特定できれば個人情報とみなされます。

さらに個人情報の中には、その取り扱いによって本人が不当な差別や偏見などの不利益を被る可能性をもつ情報があります。これは要配慮個人情報と呼ばれ、人権保護の観点から特に注意が必要です。具体的には人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴などがあります。

個人情報流出が企業にもたらす影響

個人情報流出が企業にもたらす影響

個人情報の取り扱いには細心の注意が必要です。万が一、個人情報が流出すると、以下のような深刻な影響を企業に与える可能性があります。

  • 企業の信用失墜
  • 顧客離れや売上の低下
  • 被害者への損害賠償・慰謝料

それぞれについて詳しく解説していきます。

企業の信用失墜

個人情報が流出するとテレビや新聞などのメディアで広く報道され、企業の社会的な信頼が損なわれることにつながります。一度大きな事件として拡散されると、「情報の扱いがずさんだった」という悪いイメージが長期間残り、信用の回復には大きな時間と労力が必要となります。

顧客離れや売上の低下

顧客の個人情報が流出すると、被害を受けた顧客は企業に対して強い不信感を抱くようになります。結果、顧客はその企業のサービスを利用しなくなり、顧客離れが進む恐れがあります。また、流出の原因が判明するまでサービスの提供を一時停止することになれば、その間の売上が低下する可能性もあります。

被害者への損害賠償・慰謝料

個人情報が流出した場合、企業は個人情報保護委員会及び本人へ通知をしなければなりません。これは個人情報保護法により定められています。

企業からの報告を受けた被害者が裁判を起こし、賠償問題に発展する可能性もあります。一般的に、企業が被害者へ支払う賠償金は流出した情報や規模によって確定し、氏名や連絡先などの基本情報のみで二次被害等がなければ、1人あたり3,000円~5,000円が相場とされています。しかし被害者が多ければ、たとえ1人あたりの賠償額が少額でも総額は莫大な金額になることがあり、企業にとっては大きな負担です。

また、流出した個人情報の内容によっては1人あたりの賠償額も高額になりかねません。

過去に裁判となった某エステサロンの事例(※1)では、顧客に対して実施したアンケートが流出し、回答に私生活に関わる内容が含まれていたことから、1人あたりの損害賠償額が35,000円になった判例があります。企業の中には信頼を守る目的や顧客の被害を想定して、裁判となる前に自主的に補償を行う例も見られます。

(※1):情報漏洩による損害賠償に要注意|元検事による弁護士による刑事事件法律相談

個人情報流出事件の事例

個人情報流出事件の事例

実際に発生した個人情報流出の事例には、具体的にどのようなものがあるでしょうか。

ここでは過去の個人情報流出問題の事例を4つ取り上げます。

ECサイトからクレジットカード情報が流出

ある学生服メーカーのECサイトが不正アクセスを受け、約3,800人分のクレジットカード情報が流出する事件が発生しました。また、流出したクレジットカード情報の一部は不正に利用された可能性があることも発表されました。このようなECサイトへの攻撃は同メーカーに限らず、数多く発生しています。

メール誤送信で氏名・住所・電話番号が流出

LPガスを販売する企業が、委託先の保安会社とメールでやり取りする際に誤送信が発生し、個人情報約1万2,000件が流出しました。企業はすぐに委託先に連絡し、個人情報の削除を確認しましたが、このようなヒューマンエラーによる流出も後を絶ちません。

市全体の氏名・住所などが保存されたUSB端末を紛失

自治体から業務を請け負った企業から再委託・再々委託を受けた企業の社員が、住民全員に当たる約46万人分の個人情報が保存されたUSB端末を紛失しました。その後、端末は発見されましたが、個人情報が悪用の危険にさらされたとして全国的にも大きなニュースとなりました。

ランサムウェアにより窃取された個人情報が流出

ある自治体や企業から委託を受けている企業がサイバー攻撃を受け、ランサムウェアにより150万件近くの個人情報が流出しました。委託元である自治体や企業にも影響が広がり、被害は市民や企業の顧客データにまで及んでいます。

サイバー攻撃を仕掛けたハッカー集団は犯行声明を発表したうえで、窃取したデータを公開しました。Trend Microの調査データによると、このハッカー集団は中小企業をターゲットにしているとのことです。

この事例によりサプライチェーン全体のセキュリティリスクが浮き彫りとなりました。

個人情報流出の5つの原因

個人情報流出の5つの原因

事例で取り上げたような個人情報流出問題は、主に下記のような原因で発生します。

  • 外部からのサイバー攻撃・不正アクセス
  • ウイルス・マルウェア感染
  • 従業員の不正・システム管理権の悪用
  • メールの誤送信による漏えい
  • 書類や記録媒体、モバイル端末等の紛失・盗難

それぞれの原因について詳しく解説します。

外部からのサイバー攻撃・不正アクセス

インターネットなどを通じ、悪意のある第三者が外部から攻撃を行うサイバー攻撃や不正アクセスは、個人情報流出の主な原因のひとつです。テレワークの普及により、カフェや自宅などから企業ネットワークにアクセスする機会が増え、その隙をついたサイバー攻撃や不正アクセスによる個人情報流出事案が増加しています。

ウイルス・マルウェア感染

ウイルスやマルウェアも、個人情報の流出原因として非常に多く見られる脅威です。不正なWebサイトの閲覧や、悪意のあるメールに含まれるリンクをクリックしたり添付ファイルを開いたりすることによって、ネットワークやコンピュータがウイルスやマルウェアに感染します。

感染すると、これらのプログラムがシステム内で様々な活動を行います。例えば、ユーザーの入力情報を盗み出したり、ファイルを暗号化して身代金を要求したり(ランサムウェア)、システムに損害を与えたりなどが挙げられます。これにより個人情報が外部に漏えいし、企業にとって重大な損害を引き起こす可能性が高まるのです。

従業員の不正・システム管理権の悪用

個人情報の流出原因は、外部からの攻撃に限りません。従業員が意図的に顧客情報などのデータを削除したり、盗み出して第三者に販売したりといった事例もあります。また、システムの管理権限を持つ従業員が、その権限を利用して他部署が保管している顧客情報などの個人情報に不正アクセスして取得するケースも見られます。

こうした内部の脅威は外部からの攻撃と比べて発見が遅れる傾向にあるため、企業内部の不正行為による個人情報流出は深刻な問題になりがちです。

メールの誤送信による漏えい

メールの誤送信による個人情報の漏えいは、意図せずに発生する人為的な問題の一つです。例えば、宛先を誤って外部の企業や担当者へ個人情報を送ってしまったり、Bccで送信するべきところを宛先(To)やCcに入れてしまい、メールアドレスが他の受信者に開示されてしまったりする例はよく見られる事案です。

こうした漏えいは、たとえ一度のミスであっても、企業の信用を失う恐れがあります。

書類や記録媒体、モバイル端末等の紛失・盗難

情報が記録された媒体や端末の紛失あるいは盗難も、個人情報流出の原因です。よく見られるケースは、個人情報が入ったUSBメモリやCD、ノートパソコン、スマホの紛失や盗難で、テレワークの普及などによりオフィス外での仕事が増えたことから、このような物理的な情報流出のリスクが高まっています。

紛失や盗難が発生した際、企業はすぐに状況を把握し適切な対応を取る必要がありますが、情報がすでに拡散してしまった場合には取り返しのつかない事態になる可能性もあり、大きな脅威となります。

個人情報の流出を防ぐ方法

個人情報の流出を防ぐ方法

個人情報の適切な保護は、企業にとって信頼を維持し、法的リスクを回避するために不可欠です。個人情報が流出した場合の影響は甚大であり、それを防ぐには高度なセキュリティ対策が求められます。ここでは、前項で紹介した個人情報流出の原因に対して、企業が採用すべき具体的な防止策を紹介します。

脆弱性診断やペネトレーションテストによるセキュリティリスクの洗い出し

個人情報流出への対策には、システムやネットワークに潜んでいるセキュリティリスクを洗い出す「脆弱性診断」が効果的です。

脆弱性診断を行うことにより、攻撃者が利用する可能性のある弱点を発見し、システムのアップデートや設定変更といった具体的な対策を講じることができます。

また、実際の攻撃シナリオをシミュレーションし、システムがどの程度防御力を持っているかを評価する「ペネトレーションテスト(侵入テスト)」もあわせて実施すれば、より深いレベルでのリスク評価が可能になり、想定外の攻撃パターンにも備えられます。

定期的に脆弱性診断やペネトレーションテストを行うことで、新たに発見された脆弱性にも対応でき、常に最新のセキュリティ状態を維持することが可能です。これにより、サイバー攻撃による個人情報の流出リスクを大幅に低減できるでしょう。これらのテストは専門的な知識を要するため、専門の企業によるサービスの利用を推奨します。

サイファー・テックは、Webアプリだけでなく、モバイルアプリに対する脆弱性診断にも対応可能です。

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ネットワーク・システムの適切な設定・運用

個人情報の流出を防ぐため、ネットワークやシステムが適切に設定されているかを確認しましょう。特に、不正アクセスを検知する「侵入検知システム(IDS)」や、外部の攻撃から社内ネットワークを守る「ファイアウォール」など、セキュリティ対策のシステムが適切な設定になっているかどうかはとても重要です。設定が不適切だと、万が一のときに効果を発揮できず、外部からの攻撃に対して無防備となってしまうことがあります。

また、システムのログ監視や定期的なバックアップの実施など、運用面での管理も欠かせません。これらの管理を怠ると、攻撃が発生した際に迅速な対応が難しくなり、被害が拡大する恐れがあります。例えば、設定が変更されたとき、社内で行われた必要な設定だったのか、誤設定だったのか、誰かがネットワークへ侵入しやすくするために悪意を持って変更したのかなど、ログを監視していれば必要なタイミングですぐに状況を確認できます。

個人情報保護法による罰則の周知

個人情報保護法は個人情報の取り扱いに関する規範を定めており、違反した場合の罰則も規定しています。

2024年に施行された改正個人情報保護法施行規則では、漏えい等が発生した場合の報告義務の対象拡大や報告期限の短縮、罰則が強化されました。また、安全管理措置の対象となる個人情報の範囲も拡大されるなど、近年の個人情報流出事案に対応した、より厳しいルールとなっています。

企業内でこの法律の内容や罰則を徹底的に周知することは、従業員の意識向上につながります。法令の理解が不十分であると、個人情報の取り扱いに対する意識が低くなり、結果として情報漏えいのリスクが増大します。故意の不正行為だけでなく、意図しないミスによる漏えいも罰則の対象となる可能性があるため、全社員に対して法令遵守の重要性の教育を行い、組織全体で高いセキュリティ意識の確立を目指していきましょう。

サイファー・テックでは、セキュリティ意識向上のためのトレーニングプログラムを実施しています。

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専用ツールの導入によるセキュリティ対策の強化

専用ツールやシステムの導入は、個人情報保護のためのセキュリティ対策として有効です。不正プログラムを検知するウイルス対策ソフトや、外部からの攻撃を防ぐファイアウォール、通信を暗号化するVPNなどによって、不正アクセスのリスクを軽減できます。ただし、これらのシステムもセキュリティパッチを速やかに適用するなど適切な運用をしないと不正侵入のリスクを高めることになってしまうため注意が必要です。

また、万が一ファイルが流出してしまった場合に備えてDRM(デジタル著作権管理)を導入しておくこともおすすめです。DRMはデジタルコンテンツの著作権を保護するための技術で、ファイルを暗号化して正規の利用権を持つユーザーしか利用できないようにすることで、ファイルが漏えいした場合でも第三者による閲覧を防止できるというメリットがあります。

サイファー・テックではPDFや電子書籍、音楽などさまざまなデジタルコンテンツに適用可能なDRM製品を提供しています。

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アクセス権限、ID・パスワードの適切な運用

個人情報などの秘匿性の高い情報にアクセスできるIDやパスワードの管理は、当然のことながら重要です。設定するときには文字数が長く複雑なパスワードの使用を心がけ、できる限り生体認証などと組み合わせた多要素認証を利用するようにしましょう。

IDは複数のメンバーで使い回さず、利用者1人1人に固有のIDを割り当てるようにします。これにより、いつ誰がどの情報にアクセスしたのかをログで確認できます。

最近はクラウド上で資料を共有したり編集する方法も広がっています。社内外問わず、アクセス権限は業務上必要な最小限の人員に限定するようにしましょう。

従業員の定期的な教育・注意喚起

従業員への教育や注意喚起は、個人情報保護の基本です。どれだけ高度なセキュリティ対策を講じても、最終的には従業員の意識と行動が鍵を握ります。定期的な研修やワークショップを通じて、セキュリティ意識の向上を図り、最新のリスクや対策についての情報を共有するようにしましょう。また、日常的に注意喚起を行い、従業員が常にセキュリティに対する高い意識を持つよう促すことも大切です。

サイファー・テックでは、セキュリティ意識向上トレーニングをはじめとした、社員に対する教育プログラムを提供しています。

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個人情報の持ち出しをしない仕組み

個人情報の社外持ち出しは、漏えいリスクを高める大きな要因です。このため、企業内での情報管理体制を強化し、個人情報を外部に持ち出さない仕組みを構築することが求められます。例えば、USBメモリや外付けハードディスクなどの持ち出しを禁止したり、社外からのアクセスを制限したりする措置を講じることが効果的といえます。

また、どうしても持ち出しが必要な場合は、社内承認プロセスやデータの暗号化、アクセスログの監視など徹底した管理を行い、リスクを最小限に抑える対策を取ることが重要です。

個人情報流出の可能性・リスク調査の必要性(まとめ)

個人情報の流出は、企業にとって深刻な問題です。

流出が発生すれば、企業の信頼性が損なわれ、顧客離れや売上の低下、さらには被害者への損害賠償など、さまざまな影響を引き起こします。これらのリスクを回避するためには、セキュリティリスクの洗い出しやネットワークの適切な管理、専用ツールの導入、そして従業員の教育など、多角的な対策が求められます。

企業がこれらの対策を徹底し、個人情報保護法に基づいた適切な運用を行うことが、今後ますます重要になってくるでしょう。企業としての責任を果たし、顧客の信頼を守るために、継続的なセキュリティ対策の強化が欠かせません。

サイファー・テックでは、セキュリティ診断やセキュリティトレーニングだけでなく、第三者によるファイルの閲覧などの不正利用を防止するDRMサービスも提供しています。

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