はじめに
脆弱性診断ツールを導入してセキュリティ対策の強化に取り組もうとしても、自社に最適なツールが分からず、導入の検討が難航している企業は少なくありません。適切な脆弱性診断ツールが選定できなければ、費用を投じても自社システムのセキュリティを十分に守れない可能性があります。
本記事では、脆弱性診断ツールの概要やメリット・デメリット、ツールの種類や選び方についてご紹介していきます。脆弱性診断ツールの導入に向けてぜひご参考にしてください。
サイファー・テックでは、WEBアプリやモバイルアプリの脆弱性診断サービス、またゲームアプリのチート耐性診断サービスを提供しています。
脆弱性診断ツールとは
まずは脆弱性診断の概要を解説します。
脆弱性診断とは、Webアプリやスマートフォンアプリ、サーバーやネットワーク機器などのプラットフォームを対象に、システム内に存在するセキュリティ上の弱点(脆弱性)を発見し、リスクを把握するための診断です。診断結果を基に適切な対策を講じることで、セキュリティ被害を未然に防ぐことができます。
脆弱性診断ツールは、この診断を自動化するためのツールです。脆弱性診断には専門家が行う手動診断もありますが、すべての欠陥を一つひとつ手作業で確認するのは現実的ではありません。脆弱性診断ツールは、手動診断と比べ診断精度は劣るものの、費用を抑えながらスピーディに診断を実施することができます。
サイファー・テックでは、ツール診断と手動診断を併用し、お客様の要件に合わせた脆弱性診断サービスを提供しています。
脆弱性診断の概要については、別の記事で詳しく解説をしています。こちらもあわせてご覧ください。
脆弱性診断ツールのメリット
脆弱性診断ツールにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、ツール診断のメリットを3点解説します。
低コストで診断することができる
ツール診断は、低価格で脆弱性診断を実施できます。最低限のツール導入費用やライセンス料はかかりますが、それでも手動診断と比較するとコストが抑えられることが多いです。一般的に手動診断が数十万~数百万円かかるのに対して、ツール診断は数万~数十万円ほどで実施できるものが多く、簡易的なツール診断の場合は無料で実施できるものも存在します。
短時間で診断結果が得られる
ツール診断はあらかじめ決められた検査項目に沿って実施するため、広範囲のデータを短時間で診断することができます。そのため、定期診断や開発途中の脆弱性診断も容易に行えます。開発途中に脆弱性診断を行うことで脆弱性を事前に把握し、それに対応した実装ができるため手戻りや障害対応の工数を減らせるでしょう。
専門知識がなくても運用することができる
ツール診断は簡単な操作で実施できることから、実施・運用において専門知識が不要というメリットもあります。診断ツールの運用マニュアルの整備やエラー発生時の対応を手順化しておけば、専門の担当者でなくともすぐに対応することができます。ただし、診断結果を正しく理解し、適切な対応策を講じるには専門的な知識が求められます。専門知識のある担当者や、外部の専門家に相談できる体制を整えておくとより安心して運用できるでしょう。
脆弱性診断ツールのデメリット
脆弱性診断ツールを効果的に活用するには、ツール診断のデメリットについて理解しておくことも重要です。脆弱性診断ツールを使用する診断の主なデメリットを4点解説します。
脆弱性の見逃し・誤検知が発生しやすい
ツール診断は、脆弱性の見逃しや誤検知が発生する頻度が手動診断よりも高くなります。あらかじめ決められた検査項目に沿って実施するため、項目にない脆弱性は検知できなかったり、実際には問題のない箇所を誤って脆弱性があると診断してしまったりすることがあります。また、高度な攻撃手法や複雑な脆弱性についても見落とされるリスクがあります。
未知の脆弱性や複雑なシステムに弱い
ツール診断では、既知の脆弱性データベースをもとに検査を実施する特性上、ゼロデイ攻撃のような未知の脆弱性や、標準化できない複雑な業務仕様であったり設定項目が多岐にわたり組み合わせが膨大になるようなシステムに対する脆弱性は検知できない可能性があります。
柔軟性・カスタマイズ性が低い
機械的に診断が行われるツール診断は、状況に合わせた柔軟な対応ができないというデメリットもあります。自社システムに合わせて診断項目を変更したい場合、ツール診断では、ツールの機能の対応可能な範囲内でしかカスタマイズができません。そのため、自社に合ったツールを選定するのに時間がかかってしまったり、複数のツールを運用するための工数を必要とする可能性があります。
見つかった脆弱性への対策が提示されるとは限らない
脆弱性診断ツールの中には、脆弱性の有無を検出することに特化しており、対策までは提示されないものがあります。また、対策の提示機能を持つとされるツールであっても、脆弱性の内容や利用するプランによっては対策が提示されなかったり、一般的な対策の提示にとどまり具体的な対策を講じるためには専門知識が求められる場合があります。
このように、ツール診断は、簡易的かつ低コストで実行可能であり、標準的な診断項目を網羅的に診断できるというメリットがある一方、見逃しや誤検知が起こりやすく、未知の脆弱性や複雑なシステムに弱いというデメリットもあります。そのため、ツール診断を活用する際は、ツールによる診断結果を鵜呑みにするのではなく、人の目で最終確認することが重要です。
デジタル庁の脆弱性診断導入ガイドラインにおいても、「診断サービスの選定においては、ツールによる自動的な診断のみでは不十分であり、専門家による手動による診断との併用が不可欠である。」(※1)と指摘されています。
より包括的かつ効果的な脆弱性診断が実現できるよう、ツール診断と手動診断を併用することも検討に値します。
(※1)出典:政府情報システムにおける脆弱性診断導入ガイドライン|デジタル庁
サイファー・テックでは、企業の課題にあわせた脆弱性診断サービスを提供しています。
ツールを使った自動診断に加えて手動での診断も実施しているため、ツール診断では見つけにくい脆弱性も発見することが可能です。
診断後は、レポートの提出に加えて説明会を実施し、診断結果や対策方法について解説いたします。
主な脆弱性診断ツールの種類
脆弱性診断ツールには、クラウド型とソフトウェア型の2種類があります。両タイプの特徴について解説しますので、ツール選定の参考としてぜひお役立てください。
クラウド型
クラウド型診断ツールとは、インターネット経由で脆弱性診断を行えるサービスです。クラウド型診断ツールには下記のメリットがあります。
- コストを抑えやすい
- インストールや初期設定が簡単なため、手軽に導入や運用ができる
- サービス提供企業がバージョン管理を行うことで、更新作業が不要で、常に最新のセキュリティ対策が適用される
- アクセス性が柔軟で、インターネット環境があればどこからでも利用することができる
一方で、初期費用が高額になる傾向にあり、アップデートやメンテナンスなどの維持管理も自社で行う必要があります。
ソフトウェア型
ソフトウェア型診断ツールとは、自社サーバーに診断ツールを直接インストールして診断するサービスです。ソフトウェア型診断ツールには下記のメリットがあります。
- オフラインでも利用可能である
- ネットワークを経由する負荷がかからない
- データやサーバーの管理を自社で行えるため、公開前のアプリケーションや、アプリケーションがアクセスする機密情報などを外部へ出すリスクがない
一方で、初期費用が高額になる傾向にあり、アップデートやメンテナンスなどの維持管理も自社で行う必要があります。
脆弱性診断ツールの無料版と有料版の違い
脆弱性診断ツールには、無料のものと有料のものがあります。無料版・有料版それぞれのメリット・デメリットについてまとめます。
無料版 | 有料版 | |
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メリット |
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デメリット |
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無料版のツールは、診断コストを抑えたうえで手軽に脆弱性診断を実施することができる一方、有料版のツールは、診断機能や診断範囲・診断項目が充実しており、診断後も手厚いサポートが受けられます。
ツール診断を行う用途や利用場面を鑑みてそれぞれの活用方法を検討しましょう。また、無料版には偽の脆弱性診断ツールが存在し、診断後に高額な料金を請求されることもあります。無料ツールを利用する際は、それらの詐欺行為に注意しましょう。
脆弱性診断ツールの選び方
脆弱性診断ツールを選定する際には、複数の観点から自社の利用用途に適しているかを見極めることが重要です。ここでは、ツール選定時に押さえておくべきポイントを4点解説します。
診断範囲・診断項目
ツールによって対応可能な診断範囲や診断項目は異なります。たとえば、アプリケーション診断に特化したツールは、Webアプリケーションの脆弱性を詳細に診断できますが、ネットワークレベルの脆弱性はカバーできない場合があります。一方、プラットフォームの脆弱性を検出するツールは、システムの広範囲にわたるセキュリティ状態を把握するのに適していますが、特定のアプリケーションを診断するには適していない場合があります。
診断対象がWebアプリなのか、スマートフォンアプリなのか、それともサーバーやネットワーク機器などのプラットフォームなのかを特定したうえで適切なツールを選定するようにしましょう。
診断精度・診断実績
診断項目や診断範囲が同じでも、診断精度は製品により異なります。精度の低いツールでは、見逃しや誤検出が発生する可能性が高くなるため、実績があり信頼度の高い専門企業を選ぶことが大切です。各企業の導入実績などで内容を比較し、サービスを選定する際の参考にしましょう。
また、精度の高さを判断する指標としては、IPAの診断サービスリストを参考にするのも有効です。経済産業省が策定した情報セキュリティサービス基準に適合しているかを審査したもので、一定の精度と信頼性が保証されています。
サポート体制
ツール導入後のサポート体制が充実しているかを確認することも重要です。緊急時の対応の早さやツールのメンテナンス管理、日本語対応は可能か、診断後のアフターフォローの有無などを確認すると良いでしょう。
アフターフォローの方法ひとつ取っても、メール対応のみか、オンラインミーティング対応が可能かによって、運用上の安心感も異なるはずです。
料金体系・利用料金
料金体系や利用料金は、診断ツールごとに異なります。料金体系には、診断ごとに一定料金が発生する定額サービスや毎月利用料が発生する月額型サービス、買い切り型の製品などがあります。
利用料金は初期費用や月額料金、オプション料金の有無などを確認するようにしましょう。金額が事前に明示されている製品もありますが、診断範囲や診断項目に応じて料金が変動するため問い合わせが必要な製品も存在します。複数社の製品を比較し、自社に適した費用感のツールを選びましょう。
まとめ
脆弱性診断ツールは、組織のシステムやネットワークの脆弱性を自動で診断できる便利なツールです。診断範囲や診断項目、診断精度を確認し、自社に適した診断ツールを選定しましょう。
また、ツールだけでは検知しきれない脆弱性が存在することを認識し、診断対象のアプリケーションやシステムの内容によっては、専門家による手動診断などと組み合わせて実施することも検討することをお勧めします。特に、カスタムコードが多いアプリケーションや複雑なビジネスロジックを含むシステムでは、手動診断によって、ツールでは見つけられない脆弱性を発見できる可能性があります。
社内の専門知識が不足している、もしくは判断に不安がある場合には専門企業に相談するのも有効な手段です。
サイファー・テックでは、経験豊富な診断員がヒアリングを行い、ご要件に合った最適な診断をご提案いたします。