DRM は Digital Rights Management (デジタル著作権管理) の頭文字をとったもので、書籍・音楽・映像などのデジタルコンテンツに対して暗号化などを施すことにより違法コピーや流出を防ぎ、正規流通を促進させる枠組み、およびそれに利用される技術を指します。
書籍などの紙やビデオテープ、レコード盤といったアナログのメディアでは、コピーすることにより品質が劣化します。また、コピーを繰り返すと劣化が進みます。しかし、デジタルメディアはコピーによる劣化が発生しないため、オリジナルと同じ品質のコピー品が無限に作成可能です。また、オリジナルからのコピーもコピー品からのコピーも、オリジナルとの区別が付きません。
さらにデジタルメディアは配布が容易であり、著作権者の関与なしにコンテンツが不正に流通する危険性があります。これにより市場価値が低下し、著作権者やコンテンツプロバイダーが適切な利益を得られなくなる可能性があります。技術的な制限を施すことでコンテンツの流出リスクを抑え、ユーザーが対価を支払うことで著作権者の利益を保証し、健全なコンテンツ流通の市場を形成することが重要です。
一方で、DRM による制限はユーザーの利便性を損なう場合もあります。また、DRM の有無によって売上に変化はないという主張もあり、音楽業界を中心に DRM フリーの流れが加速した時期もありました。「ソーシャル DRM」とも呼ばれる電子透かしを導入するケースもみられます。
しかし、昨今のサブスクリプション・モデルの隆盛により、DRM は再び重要性を増しています。コンテンツを期間限定で利用できるようにするには、アクセスコントロールが重要な役割を果たすからです。DRM フリーのコンテンツやソーシャル DRM では利用期限の管理ができず、サブスクリプション・ビジネスを成立させるのは難しくなります。
また、「漫画村」のような海賊版サイトでは、利用者が不正なサービスと認識せずに利用している場合もあります。最近では正規のサービスでも無料でコンテンツが提供される場合があり、利用者にとって海賊版サイトかどうかを見極めることが難しくなっています。このような場合、電子書籍においては正規版サイトに付与される ABJ マークの存在を確認することが解決策の一つですが、DRM の適用有無も判別の手がかりとなります。DRM ベンダーが海賊版サイトと契約することは考えにくく、また DRM が適用されたコンテンツを不正に流通させることは困難です。したがって、自身が作成したアカウントでコンテンツにアクセスできる場合、それは高い確率で正規のコンテンツであるといえます。
ユーザーの利便性を極力損なわないようにしつつ、権利者の利益も確保することが、DRM に求められる役割となっています。