はじめに
これまで紙媒体でマニュアルを作成、運用してきた企業にとって、マニュアルの更新や共有は手間が多く、めんどうな作業だったのではないでしょうか。近年ではマニュアルの電子化が注目を集めており、多くの企業が紙から電子へと移行しています。電子化されたマニュアルは、特定のキーワードで検索ができたり、複数のデバイスで閲覧や更新ができるため、視認性の高さだけでなく、業務効率化にもつながるメリットがあります。
本記事では、マニュアルを電子化するメリットや電子化の方法、注意点、セキュリティ対策などについて詳しく解説します。メリットや注意点などを知ることで、マニュアルの電子化がスムーズに行えるでしょう。現在マニュアルを運用していて今後電子化を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
各種マニュアルの安全な運用に欠かせないセキュリティ対策。
マニュアルは利用シーンやフローによって適切な対応が求められます。サイファー・テックは、電子書籍やマニュアルといったデジタルデータを保護する「DRM」技術を提供しています。電子化した社内資料やマニュアルを安全に運用したいとお考えの方は、お気軽にご相談ください。
マニュアルを電子化するメリット
マニュアルの電子化にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、紙媒体のマニュアルと比較したメリットを4点紹介します。
情報を検索しやすい
紙のマニュアルは、特定の項目を検索する際、目次を確認して必要な情報があるところまでページをめくらなければなりません。マニュアルが分厚い場合には情報の検索に時間がかかり、急いでいるときには手間になることもあります。一方で、PDFやHTML形式などに変換された電子マニュアルでは、キーワードで検索ができたり、目次リンクをクリックすることで該当ページをすぐに参照できる機能をつけられるため、必要な情報へスムーズにアクセスができます。
情報の更新や差し替えが容易
紙媒体でマニュアルを運用している企業の中には、内容が変わっていても更新できずに長期間放置しているところもあるのではないでしょうか。古い情報がマニュアル利用者を混乱させることは理解しているものの、紙マニュアルを更新、差し替えする場合は内容の精査に加え、製本や印刷といった作業も必要となるため、膨大な工数と時間がかかってしまいます。
それに対して、電子化されたマニュアルは製本や印刷といった作業を必要とせず、内容の更新や差し替えがしやすいという特長があります。
また、電子マニュアルの場合には、編集ログ機能をつけることもできるため、いつ誰がどんな内容を修正したのかがわからなくなる混乱も回避できるでしょう。
コストを削減できる
紙のマニュアルは、更新のたびに用紙代やインク代がかかります。また、マニュアルを保管する物理的なスペースも必要になり、その保管スペースのコストが必要です。
マニュアルを電子化すれば、パソコン上ですべての作業が完了するため、製本・印刷費用や物理的スペースのコスト、さらには人件費の削減にもつながります。
業務効率化につながる
これまで説明したように、電子化されたマニュアルは情報の検索がしやすく、更新や差し替えも容易で、共有や持ち運びのしやすさにも優れた特長があります。マニュアル管理、運用にかかる作業を大幅に削減できることで業務効率化にもつながります。効率化によって生まれた時間は、本来時間をかけるべき業務に充てることができるでしょう。
持ち運びが楽になる
紙のマニュアルには実物が存在します。そのため、情報量の多いマニュアルの場合、分厚くて持ち運びが困難なこともあるでしょう。マニュアルを電子化すれば、端末上でデータを管理でき、情報量の多いマニュアルでも持ち運びが容易になります。さらに、電子マニュアルはさまざまなデバイスからアクセスできるため、外出先や営業先といった場所でも必要なときにすぐ情報へのアクセスが可能です。
マニュアルを電子化するデメリット
マニュアルの電子化にはメリットだけでなくデメリットもあります。マニュアルを電子化した際に起こりうるデメリットを3点解説します。
閲覧には電子端末が必須
電子マニュアルの閲覧には電子端末が必須です。電子端末を整備していない場合には、マニュアルを電子化する際に端末の整備も必要になります。
また、バッテリー切れや故障などで端末が使えなくなると、マニュアルも閲覧できなくなります。クラウド型サービスを利用する場合は、通信回線に障害が発生した場合も閲覧に支障が生じるでしょう。重要性の高いマニュアルは紙でも保管しておくことを推奨します。
人によっては視認性が低いと感じる場合がある
電子マニュアルは、人によって視認性が悪いと感じることもあるようです。例えば、マニュアルの閲覧にスマートフォンなどの小型の電子端末を使う場合は、画面が小さいため読みにくいと感じるケースがあります。また、複数のマニュアルを同時に開くことができない点や、紙マニュアルのように直接的な書き込みやハイライトを引けないところも視認性のデメリットとして挙げられます。小型端末で閲覧する状況があると思われる場合には、閲覧しやすいデザインを意識することが大切です。また、近年ではデバイス上でメモやマーキングができる機能を持つツールもありますので、マニュアルの利用方法を意識した運用を検討するようにしましょう。
紙マニュアルから電子マニュアルに変更しても使いにくいと思われてしまうと、マニュアル自体が使われなくなり業務に支障が生じる可能性もあります。利用者や利用シーンにあわせて電子マニュアルの導入を検討してください。
電子化するまでに時間や労力がかかる
電子マニュアルは導入後の作業効率を高める効果がある一方で、紙から電子化する際には、それなりに時間がかかってしまうのも事実です。情報を整理するほか、データ化にも手間がかかります。例えば紙をスキャンにしてマニュアルを電子化するとなると、1枚ずつスキャナに読み取らせる工程が発生します。Wordを使用してマニュアルを電子化する場合は文字を入力する作業、Webページで電子化する場合にはHTMLなどの専門知識が必要です。はじめて紙から電子化する場合には、事前に作成の手順や電子化の種類などについて把握しておくようにしましょう。
マニュアルを電子化する方法
一口にマニュアルの電子化といっても、いくつかの方法があります。マニュアルを電子化する主な方法を5つ紹介します。
紙マニュアルをスキャンしてPDFに変換する方法
1つ目は紙のマニュアルをスキャナで読み取り、PDFファイル形式に変換する方法です。スキャンするだけのため、手軽に電子化することができます。しかし、この方法は1ページずつスキャナにデータを読み込ませる必要があり、電子化したいマニュアルの数やページ数が多い場合には時間がかかるでしょう。また、元々の紙マニュアルの文字サイズによっては、PDF化によって視認性が下がるケースもあります。閲覧する電子端末が小型の場合は特に注意が必要です。
Word、Excel、PowerPointなどで作成する方法
2つ目はWordやExcel、PowerPointで作成する方法です。これらのソフトは使い方に慣れている人が多いことから、手軽に作成できる点がメリットです。ただし、作成方針やデザイン、フォーマットなどを統一しておかないと、作成する人によって見た目がバラバラになり、わかりにくいマニュアルになってしまう可能性があります。また、マニュアルの原本がわからなくならないよう、あらかじめ保存場所などを決めておく必要があるでしょう。
WebページにHTML形式で作成する方法
3つ目はHTML形式で作成する方法です。Webブラウザで閲覧できるため、時間や場所を選ばず、さまざまなデバイスからマニュアルを閲覧できます。HTML形式のマニュアルは検索エンジンやブラウザの機能を利用して簡単に検索ができ、動画などの多様なメディアを組み込むことも可能です。JavaScriptやCSSを利用すれば、動的なコンテンツや図表も作成可能で、視認性が高いマニュアルも実現できます。ただし、作成にはHTMLなどの専門的な知識が必要です。
マニュアル作成の専用ツールを利用する方法
4つ目は専用ツールでマニュアルを作成する方法です。電子マニュアルの作成に特化したツールは、専門知識がなくても簡単にマニュアルを電子化できるでしょう。作成したマニュアルをクラウドで保存できるものであれば、情報の更新や共有も簡単です。
ただし、専用ツールは初期費用やランニングコストなどが発生する点がデメリットです。ツールによって使える機能や費用は異なるため、必要な機能と予算によって最適なものを選びましょう。
外部へマニュアル作成を委託する方法
5つ目は外部へマニュアル作成を委託する方法です。マニュアル制作会社などに依頼すれば、社内リソースを最低限に抑えて、マニュアルの作成が可能です。専門業者だからこその高品質なマニュアルが作成できる点もメリットといえます。しかし、ほかの方法に比べて費用や完成までの時間がかかるという点がデメリットとなります。また、自社で作成しないためノウハウが蓄積されないことや、簡単な修正等も外注業者への依頼が必要となることも注意が必要です。
マニュアルの作成には、さまざまな方法があります。発生する費用はもちろんですが、作成後の運用イメージを持ったうえで最適な方法を検討してみてください。
マニュアルの電子化、作成のポイント
マニュアルの電子化で注意しなければならないポイントを4点紹介します。
現在のマニュアルを整理する
まずは現在のマニュアルの整理を行いましょう。紙から電子への移行は、現在のマニュアルを整理するよい機会でもあります。現在のマニュアルで不要な部分を抽出して削除したり、追記が必要な部分を把握しておくことが大切です。また、チェックリストのような、紙で残しておいた方がよいものもあります。不要な部分や紙で残す部分の選別とあわせて、電子化する部分を明確にしましょう。
目的を決める
続いて、誰に、何のためにマニュアルを作成するのか、目的を明確にしましょう。例えば、営業成績を10%向上させるために、新入社員が読むことを想定して作成するマニュアルであれば、成績上位者の業務フローをマニュアル内に記載するなどのコンテンツが重要になります。目的を具体的に定めることで、マニュアルの利用者や利用シーンに沿ったコンテンツが作成でき、画像や動画の必要性なども検討できるようになるでしょう。
読み手を意識する
マニュアルの作成では読み手を意識することが重要です。例えば、活字では理解しにくい内容であれば、図やイラスト、動画を多めに入れたほうがよりわかりやすいマニュアルになるでしょう。紙で印刷する機会が多い場合は、印刷しやすいようにレイアウトが固定されたPDF形式での電子化もおすすめです。
電子端末での閲覧が多い環境では、スマートフォンにも対応した文字サイズやデザインにしたりすると、読みやすいマニュアルになります。
また、リンク付きの目次をつくり、知りたい情報にすぐアクセスできる構成にしておくことも大切です。
段階的に進める
マニュアルの電子化は焦らず段階的に進めていきましょう。時間を優先するあまり、すべてのマニュアルを一斉に電子化することは問題が起きたときにリカバリーが難しくなります。また全社員への一斉導入は実際の利用者が混乱する可能性もあるでしょう。
失敗しないためには小規模な単位で、なおかつ重要なマニュアルから少しずつ進めることをおすすめします。少しずつ導入することで、電子化のメリットや課題を確認しやすくなり、問題が発生しても影響を最小限に抑えられます。
電子マニュアルの運用上の注意点
電子マニュアルは作成時だけでなく運用する際にも気をつけなければならないポイントがあります。ここでは電子マニュアルを運用するうえで気をつけたいポイントについて紹介します。
セキュリティ対策を徹底する
マニュアルの電子化は持ち運びの容易さやアクセスのしやすさから情報漏えいのリスクがあります。それには内的、外的さまざまな要因が挙げられ、それぞれに対してセキュリティ対策が必要です。
例えば、内的要因で発生する情報漏えいを防止するためには、マニュアル持ち出しのルールを決めたり、アクセス権限を制限するなどの方法があります。
サイバー攻撃などの外的要因で発生する情報漏えい対策では、専用のセキュリティソフトを導入するのが効果的です。
また、データの暗号化(DRM対策)を行えば内的・外的どちらのリスクに対してもセキュリティ対策を講じることが可能です。DRMについてはこちらの記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
詳細なセキュリティリスクと対策方法については、このあと解説します。
万が一に備えてバックアップをとる
電子化されたマニュアルは、サイバー攻撃や災害などによってデータが消失する可能性があります。したがって、万が一に備えてバックアップをとることが必要です。バックアップの取得方法やスケジュールなどを決めておきましょう。
バックアップは、物理的・ネットワーク的に離れた場所で行うほか、念のために紙ベースでの保管もしたほうがよいでしょう。不測の事態が起きても、どれか一つは残るようにバックアップの方法を定めることが大切です。
定期的に更新する
マニュアルの電子化は業務効率化などを目的として行われます。こうした目的を達成するためには、定期的な更新による最新情報の維持が欠かせません。
従業員からのフィードバックにより、わかりにくい部分を修正するほか、よりよい方法やノウハウなどを積極的に共有しましょう。また、自社の商品が新しくなった場合や、関係法令の変更により業務が変化した場合も、マニュアルを更新する必要があります。
定期的に更新するために、社内ルールを定めるほか、担当者を決めておきましょう。
マニュアルを電子化した際のセキュリティリスク
電子マニュアルのセキュリティリスクについて、もう少し詳しく解説しましょう。
一般的に、紙のマニュアルを電子化することでセキュリティは向上します。しかし、電子化による特有のセキュリティリスクも存在します。ここでは主なリスクとその対策について紹介します。
サイバー攻撃など外部要因による情報漏えい
まず考えられるのが、サイバー攻撃による情報漏えいです。サイバー攻撃は年々巧妙化しているため、あらゆる方法でセキュリティ対策を講じる必要があります。例えば、二要素認証やシングルサインオンといったアクセス制御や認証メカニズムを実装する方法や、脆弱性診断を行うといった対策があります。どのような方法でマニュアルを電子化するのかによって対策の方法は変わるため、セキュリティ対策を専門としている企業に相談するのも良いかもしれません。
内部からの情報漏えい
サイバー攻撃のような外部からの攻撃だけではなく、内部から情報漏えいする可能性もあります。例えば、電子メールに誤ってマニュアルを添付したり、マニュアルを保存したUSBを紛失したりすることが想定されるでしょう。また、悪意をもった従業員が故意にマニュアルを持ち出すケースも皆無ではありません。これらの対策にはデータの暗号化やIPアドレス制限、閲覧権限の制限といった対策のほかに、社内ルールを策定しておくことも効果的です。
オンラインストレージの取扱いには注意が必要!
近年はGoogleドライブなど無料オンラインストレージの利用も活発化していますが、取り扱いには注意が必要です。特に多いのが閲覧制限の設定ミスによる漏えいです。オンラインストレージは共有できることが便利な点ですが、設定を誤ると誰でも閲覧が可能になってしまうことがあります。共有設定には細心の注意を払い、基本的には閲覧を許可するユーザーを指定する方法で設定することを推奨します。
電子マニュアルのセキュリティ対策にはDRMがおすすめ
電子マニュアルのセキュリティ対策には、マニュアルの持ち出し禁止などの運用ルールによる方法が考えられます。また、閲覧者を限定するアクセス管理による方法などもあるでしょう。
しかしこれらの方法だけでは、実際にマニュアルが漏えいした場合の備えが不十分です。情報漏えいのリスクを限りなく小さくするためにも、マニュアルが第三者に渡ってしまった場合の対策を考えておく必要があります。
漏えい対策としておすすめなのがDRM(Digital Rights Management:デジタル著作権管理)の利用です。DRMはデータを暗号化するだけでなく、使用環境に合わせたさまざまなセキュリティ対策を施せます。例えば、画面キャプチャの防止や利用可能な期間や回数の制限、印刷の制限などです。電子マニュアルの場合は、閲覧可能な場所を社内に限定すれば、万が一マニュアルが漏えいしても第三者が閲覧することができなくなります。
マニュアルを安全に電子化させるためには、マニュアルの利用フローにあわせた適切なセキュリティ対策が必要です。サイファー・テックではお客様のご要件にあわせたDRMのご提案を行っております。DRMをご検討されている方はお気軽にご相談ください。
また、DRMについては別の記事でも詳しく紹介していますので、そちらもぜひご覧ください。
まとめ
マニュアルの電子化は、検索による情報アクセスの利便性や、マニュアルの更新・共有作業の簡略化、マニュアル運用にかかるコスト削減などが期待できます。必要な時にすぐアクセスでき、更新や共有に工数もさほどかからないため企業の業務効率化にも効果を発揮します。
一方で、電子化特有のセキュリティ対策やシステムトラブル対応が課題とされており、DRMの活用やバックアップの準備などの対策が不可欠です。電子化することのメリット・デメリットを十分に考慮したうえで、導入を検討しましょう。